【天才か反逆者か】厳選!バンクシーの代表作品30点のメッセージを考察・解説

みなさん、こんばんは。トモヤです。
そろそろ梅雨明け、そして8月突入。
季節を感じておりますでしょうか。

今回は横浜アソビルにて開催しました「バンクシー展 天才か反逆者か」からバンクシーの代表作品30点をご紹介しながらメッセージの考察、解説をしていきます!

バンクシーは、イギリスを拠点に活動し、
世界中のストリート、 壁、 橋などを舞台に、神出鬼没に出現する、
また社会風刺的かつユーモアな作品スタイルが人々を惹きつける有名覆面アーティストです。

それでは!
テーマに分けて紹介していきます。

バンクシーワールドにいってみましょう!

【1目で分かるバンクシー作品テーマ】

  1. 『反消費主義』マーケターが意図的に作り出す資本主義システムへのアンチテーゼ
  2. 『政治』大衆意識を操作する手段としての政治、それを維持するための警察組織へのアンチテーゼ
  3. 『抗議』社会に対するバンクシーによる独断的な意見や生き方への「抗議」
  4. 『反軍国主義』戦争と軍隊に対するバンクシーのスタンス
  5. 『世界一眺めの悪いホテル』パレスチナにオープンしたウォールドオフホテル
  6. 『ディズマランド』街おこしのために作られた「逆ディズニーランド」的テーマパーク
  7. 『バンクシーズ・ラット』どのような状況でも生きていけるネズミは唯一の都会環境に適合した野生動物
  8. 『アートの生と死』ある時は金儲けのため売られ、時には塗りつぶされ、自然に崩れることもある短命なストリートアート

反消費主義

バンクシーの作品で頻繁に取り上げられるテーマの1つが反消費主義です。

大量のマーケティング情報、
私たちの周りにあるものの多くがうそっぱちであり、
暮らしに欠かせない物やイベント、休暇、
その多くは、マーケターが特定の経済的問題を解消するために編み出したもの。

資本主義システムは、常により多くのものを買うことを促す。

マーケターは消費者に新車を運転させ、より大きな家に住まわせ、流行を追いかけて、服を取っかえひっかえさせようとしているのだ。

1. フェスティバル(資本主義をぶっつぶせ)

人々が屋台に行列をつくっている。
並んでいるのは若い母親やパンクス、ヒッピー、フリーガン、左翼学生など、
世間から「反資本主義者」と見なされているであろう人々だ。
皮肉なことに、彼らが並んでまで買おうとしているTシャツには “Destroy Capitalism”の文字が書かれている。

観客の消費傾向に合わせて、巧妙に商品化したことをうかがわせるスローガンだ。

2.バーコード

バーコードが私達の暮らしに登場したのは1970年代のことである。
以来、しっかりとその役割を果たしており、消費者がすばやく買い物の支払いをするのに役立っている。
これは、動物保護から消費主義まで、様々な解釈が可能な作品だろう。

はたして私たちは、消費の檻から逃げ出したこの肉食動物を恐れるべきなのだろうか。それとも、この動物は消費崇拝に支配されることのない稀有な人間を表しているのだろうか。

3.グリン・リーパー

最もインパクトがあるのは、死神の顔だ。
その顔が黄色い「スマイリー」のアイコンになっていて、古典的な「死神」のイメージと組み合わさり、シャレを言うように、
価値を転換することのために使い古されてしまったアイコンであることを示している。

4.キリスト・ウィズ・ショッピング・バッグズ(買い物袋を持つキリスト)

クリスマスの真の意味が捻じ曲げられていることに対する皮肉が込められている。
本来、慈悲や思いやり、寛容、感謝の祝日であったが、節操なく消費する日へと変わってしまった。
かつてクリスマスは休息と内省のための日で、物質に縛られることがあってはならないとされていた。

プレゼントは明るいピンクのリボンで飾られているが、底からは黒い塗料がにじみ出ており、キリストの流した血を連想させる。

5.トキシック・メアリー

バンクシーは、聖母子像をイタリア・ルネサンス絵画を思わせるスタイルで描きつつ、マリアとイエス、そして宗教的権力者と俗人との関係を風刺している。

毒の配合されたミルクを赤ん坊に与える聖母の姿は、はたして宗教が信者に真の安全をもたらしてくれるのか、という疑問を投げ掛けている。
宗教はこれまで多くの戦争を引き起こし、人を死にいたらしめ、文化的不寛容を生み出してきた。

6.フライング・ショッパー

ショッピングカートとともに落下している女性は、落下しているにもかかわらず、その手を放さずぎゅっとカートを握りしめている。

この絵はロンドンの高級ショッピング街のビルに描かれており、消費社会・格差社会への風刺を表現している。

7.ブラー『シンク・タンク』

イギリスのロックバンド「ブラー」の7枚目のスタジオアルバム『シンク・タンク』は、2003年5月にリリースされた。
このアルバムが録音された背景には、9.11同時多発テロ事件の後、「テロとの戦い」という大義を振りかざし、様々な議論を巻き起こした一連の軍事行動があった。
アルバム『シンク・タンク』のカバーアートからも、戦争反対を訴えるバンクシーのメッセージが読み取れる。

この作品は営利目的で制作されたとの声も聞かれたが、反戦という志を共にしていること、さらには資金が必要だったこともあり、バンクシーは快諾して作品を完成させた。

8.セーブ・オア・デリート

2002年にグリーンピースは、森林を救う戦いの一環として、バンクシーとコラボレーションをした。

このポスターでは、モーグリと『ジャングル・ブック』のキャラクターたちが縛られてかつて森だったところに立たされ、完全に途方に暮れているように見える。
大人の世界というものはつまり、自分の利益のために森林を破壊し、地球に向かって考えなしに刑を宣告する冷たい木こりみたいなものなのだ。

バンクシーは環境について語るとき、常に地球の資源を吸い尽くさんばかりの大人たちと対決し、子供たちの世界の側に立って、未来の世代の生活を左右するのは、いまの私たちであることを思い出させるのだ。

9.スープ・カンズ

バンクシーは様々な美術館に複数回の侵入を試みた。
バンクシーは、自作のテスコ・スープの絵を、MoMAにあるアンディ・ウォーホルのキャンベル缶の作品の隣に置いたとき、初めて自分をモダンなアーティストだと思ったのだった。
人々はその作品のそばで足を止め、それを深い眼差しでまじまじとみつめたのだった。
このような美術館への入り込み方すべての背景には、同じ作品の単純化した、安っぽいバージョンを人々に示すというアイデアがあった。

これらの作品を見ることで、ブランドに関する問題について、そして芸術と社会との全体的な関係について、考えを巡らせることができる。

政治

大衆の意識を操作する手段としての政治は、バンクシーにとって暴力や消費主義と同じくらい不愉快なものである。
彼の意見は、作品のなかで明確に表現されている。
エピグラフとして、バンクシーの言葉を紹介する。

「世界をよりよい場所にしたいと望んでいる人間ほど危険なものはない」

また時折、政治体制を維持する役目を果たす警察にも、バンクシーの目は向けられる。

10.アイ・フォウト・ザ・ロー

ストリートアートを落書きとして罰する法律への必死の抵抗だ。
権力に刃向かっているように見えるが、見れば見るほど、微妙なニュアンスに気が付く。ここでバンクシーは「ザ・クラッシュ」の歌「アイ・フォウト・ザ・ロー」をストレートに引き合いに出している。

11.モンキー・パーラメント

イギリス議会議事堂の下院で、選挙で選ばれた代議士たちが集まって意見を表明している。
しかし現実の政府とはちがって、サル議会の議員たちは互いにバナナを投げ合うつもりでいる。
議員たちによる経費不正申告という国民的スキャンダルに応じて制作されたこのバンクシーの作品は、政治に対する不満の高まりとともに登場した。

バンクシーのアイコン的な作品はもう少し直接的で、あなたが選挙で選んだ議員たちは、あなたをサル並みにする、ということなのだ。

12.フライングコッパー

背中に天使の羽をつけ、優しい微笑みを浮かべた制服姿の警官。
一見、友好的に見えるが、手にはマシンガンを抱えている。
バンクシーによると、現代社会において民間人を標的とした警察の暴行はもはや珍しくなく、より組織的なものへと変化してきている。

バンクシーはこう警告する。誰も信じてはならない。権力と権威を振りかざすやつらは疑ってかかれ。
いつ攻撃のための銃が使われるか分からないのだから。

13.ストップ・アンド・サーチ

公共の場所で人を止め、質問し、捜査する警察の権力、そしてその権力行使のやり方は、自由と安全についての激しい論争を引き起こしてきた。
現在になっても職務質問が法の執行と市民との間の力関係を示している場所がある。

『オズの魔法使い』は、世界中のあらゆる年齢の人々に知られている物語だ。
主人公であるドロシーという名の少女は、よりよい場所を求めて旅する、真実を追い求める典型的な人物像だ。
彼女はトトという犬を連れているが、それは誠実と親交のシンボルであり、ドロシーはたいていその犬を編みかごに入れて持ち運んでいる。
作品ではドロシーとトトが暴動を鎮圧する装備を身に着けた警官に呼び止められ、
かごに不法に持ち込んだものを隠していないか、検査を受けている。

《ストップ・アンド・サーチ》は、移民をめぐって外国人を嫌悪する動きが広がっているのと、よりよい暮らしを求める人々の入国を様々な政府が規制し妨害しようとする試みを、表わしているのかもしれない。

14.ワン・ネイション・アンダー・CCTV・フォトグラフ

赤いジャケットを着た少年が梯子の上に立って壁にメッセージを書いている。

「CCTV(監視カメラ)の下で、国民よ一つになれ」

そして地上からは、少年は番犬を連れた警察官に撮影されている。

ここでバンクシーは、私たちが進歩の道をたどればたどるほど、プライバシーの権利が失われ、カメラの監視下に生活を送ることになる、という事実に注意を促している。

抗議

グラフィティ、そしてそれに続くストリート・アートは、抗議というかたちで姿を現わした。
それゆえに実際、バンクシー作品のほとんどは、ある種の独断的な意見、あるいは社会に存在する生き方に対する、彼の抗議である。

著書『バンギング・ユア・ヘッド・アゲインスト・ア・ブリック・ウォール』で、バンクシーはこう書いている。

「グラフィティは、もしあなたがほとんど何も持っていなくても、使うことのできるわずかな道具のひとつだ。そして世界の貧困を救うための絵が思いつかなくても、立ちションをしている奴を微笑ませることならできる」

15.ハブ・ア・ナイス・デイ!

あなたの前には、二列の武装した兵隊が、戦車を真ん中にして並んでいる。
兵隊は、直接あなたに向かって動いてくるのではないかと思われるほど、前景にいる。

全体的な構成は、グレー、黒の色調のなかに、顔だけが目立つような絵になっている。
バンクシーが、それらを有名なスマイリーの顔で置き換えたからだ。ただ微笑を浮かべながら、これらの兵士たちは破壊をするための体制を整え、歩みを進めるときを今か今かと待ち望んでいる。

作品のタイトルと内容とのコントラストは、すごく滑稽ではないだろうか? 少し想像してみてほしい。
家の窓から外を眺めると、黒い迷彩服を着て、機関銃を持った連中がいる。
戦車もある。
ハブ・ア・ナイス・デイ!

16.ラブ・イズ・イン・ジ・エアー

おそらくバンクシー作品のなかでも最も有名なもののひとつだろう。

この作品で彼は街頭での抗議に参加する人を描いているが、その顔はバンダナで隠されている。
一見すると、彼は火炎瓶を投げようとしているように見える。しかし近付いてよく見ると、彼が実際に手にしているのは花であるとわかるのだ。

資本主義体制や軍国主義体制に対する抗議は暴動の最中に花を投げ込むのと同じくらい役に立つ、ということだ。

彼の作品はシニカルで嫌味ったらしいとしばしば言われている。確かにそうかも知れないが、彼を非難できない点がある。それは、彼は人々に考えたり、見ているものの意味を理解しようとしたりする時間を与えない、というところだ。

17.ラフ・ナウ

ブライトンにある人気のナイトクラブからの注文だった。
もの憂げなサルが描かれていて、彼らは「いまは笑うがいいさ。でもいつかは俺たちがやってやる」という標語付きの広告をぶら下げている。

18.「ドント・パニック」ポスター

カラーの部分が黄色ではなくピンクだった。少年の頭上には光輪だけでなく小さな翼もついていた。
加えて、グラフィティには「フォーギブ・アス・フォー・トレスパッシング(不法侵入をお許しください)」という文字が添えられていた。

ここでバンクシーは、言葉遊びで祈りの文言を皮肉っている。つまり、グラフィティは常に私有地に不法侵入し、他人の家の壁をキャンバス代わりに使っていると言うのだ。

反軍国主義

人間が選択し得る業として、最も卑劣なものである「戦争」。

バンクシーの作品に込められた反軍国主義のテーマは、政治と抗議のテーマと深く絡み合っている。
彼は自身の作品において、戦争と軍隊に対する自らのスタンスを明確に示している。

「世界で最も大きな犯罪を実行するのは、規則を破る側ではなく、規則を守る側の人間だ。命令に従う連中が爆弾を投下し、いくつもの村を破壊する」

19.ナパーム弾

キムの両側に、バンクシーはアメリカ文化と資本主義のアイコンを配した。
これによってバンクシーは、アメリカがその市民と他国の代表者たちをどのように受け止めているか、広く資本主義への注意を促したいと考えた。
ロナルド・マクドナルドとミッキーマウスは、少女を救おうとしているのだろうか、それとも逆に恐ろしい結末へと導こうとしているのだろうか。
少女の顔には狂わんばかりの恐怖が居座っており、対照的にアメリカ文化のアイコンの顔には微笑が漂っている。

20.CND(シー・エヌ・ディー) ソルジャーズ

兵士たちは平和のシンボルを描いているが、その一方で使っているのは赤い塗料だ。
同時に彼らは恐怖の表情を浮かべており、まるで警官に逮捕されるのを恐れているかのようでもある。
しかしバンクシーは、さらに深い意味を作品に込めた。兵士たちは、軍司令官や政治家の命令に従わざるを得ない普通の人々だ。
兵士にとっての落書きとは、私たちが都市の壁にステンシルで絵を描くのと同じように、戦時下における抗議運動なのだ。

21.ボム・ラブ

彼が伝えようとしているのは、「愛は戦争を超越する」ということである。
ここに描かれた少女は、巨大な爆弾を、まるでテディベアを抱きしめるかのように抱えている。
その愛情あふれる腕に包まれれば、どれほど強力な爆弾さえも無力化できるかもしれない。
つまり、戦争には力などなく、ポジティブで正しい行動だけが勝利をもたらすことができるのだ。

22.ハッピー・チョッパーズ

ヘリコプターの飛行隊の全体図を描いたが、それらをピンクのリボンで飾りイメージを和らげると同時に、軍事的に手を取り合って愛国主義を生み出すことを嘲笑しているのがよくわかる。

世界一眺めの悪いホテル

バンクシーがパレスチナにオープンしたウォールドオフホテル、
通称“世界一眺めの悪いホテル” の再現

今なお紛争のつづく地・パレスチナにバンクシーが作ったアートホテル「ザ・ウォールド・オフ・ホテル(THE WALLED OFF HOTEL)」の1室を再現したスペースには、スカーフを巻いた男と兵士が“枕”で争う姿を描いた壁画も設置した。

ディズマランド

2015年に5週間限定で開園された、
“逆ディズニーランド” 的テーマパーク

「悪夢のテーマパーク」とうたわれた〈ディズマランド〉は、ロンドンから電車で2時間半のウェストン・スーパー・メアにあった。ゲリラアーティストとして活動を続けるバンクシーの本拠地、ブリストルのほど近く。

そのため、「街おこしのために作られたのでは?」という噂を現地で聞くことができた。
2.5エーカーもの敷地を使い、17か国約50人のアーティストが制作した現代アートが散りばめられた壮大な「テーマパーク」だった。

23. ポリス・ライオット・トラック

「ディズマランド」をつくったときに手伝ってくれたアーティストへの贈り物だった。

この作品でバンクシーは、「ディズマランド」の展示のひとつであった警察トラックを描き、子供たちの姿と虹を描き加えている。警察トラックが反乱を起こして子供たちの遊び場になる、というアイデアそのものがバンクシーにしてはかわいらしいと思われるが、残念ながら現実にはならないだろう。

バンクシーズ・ラット

ネズミはどのような状況でも生き抜くことのできる動物で、都会環境に最も適合した唯一の野生動物だ。私たちはみな、ある意味でネズミなのだ。

私たちは、システムが作り出す環境のなかで生き抜こうともがき、そのシステムを出し抜こうと、ずるく、巧妙に生きている。

24.ラブ・ラット

この作品は、ストリート・アートに対する愛についてのものだ。愛を表現するのは、確かに価値のあることだ。
ストリート・アートは空間を変化させ社会に影響を与え、異なる角度から人生を見せてくれる。
もちろん、モチーフはあまりにシンプルなものだが、通りすがりの人々でも容易にわかる。
人々は愛を表わす町のネズミを見て、そこに自分自身の姿を認めるのだろう。

25.アイ・ラブ・ロンドン・ラット・フォトグラフ

バンクシーと有名なグラフィティ・ライターのキング・ロボとの対決が激化していた頃にキング・ロボのチームが絵を描き替えた。
いま、ネズミの看板には「ロンドンが大好きだ。ロボ」とある。

ロボは、ロンドンで最初のグラフィティ・ライターのひとりで、
バンクシーはグラフィティ・ムーブメントから現れた最も有名なストリート・アーティストのひとりだ。

ライターたちには、他人の作品を自分のアートに使ってはいけない、という明確なルールがある。
ロボは1985年にロンドンのリージェント運河にグラフィティ作品を描いたが、2009年に、バンクシーによってそのモチーフが新しい作品に利用されてしまった。
まさにそのときから、2人のアーティストの間で争いが始まった。
彼らは互いに敵の作品を改作した。ロボのチームは、市街にあるバンクシーの作品を描き替えさえした。
戦いの末に何が起こったのかは、誰も知る由もない。

アートの生と死

バンクシーのアート作品が他のストリート・アーティストのものと同様に、ごく短命であることを知っていただきたい。

作品は、市政当局や競合するグラフィティ・グループ、ただ嫉妬心をもつ人たちによって塗りつぶされてしまうのだ。ある作品は壁から切り取られて金儲けのために売られ、その一方で自然に崩れていくものもある。

26.チューズ・ユア・ウェポン・ライト

「チューズ・ユア・ウェポン(武器を選択せよ)」とは、ストリート・アートは民衆の正義のための手段であるということを意味している。描かれているのは、不良っぽい服装の男。
体型の分からないだぶだぶの服を着て、フードをかぶり、顔にはバンダナを巻いている。何者なのか、見分けることは難しいだろう。男は正体を隠している。
対照的に、男が連れている犬はマンガっぽくユーモラスに描かれており、一目見て、ストリート・アーティストのキース・ヘリングのキャラクターであると分かる。
この絵は、バンクシーのヘリングに対するオマージュなのだ。

27.ノー・ボール・ゲームス

2人の子供が「ノー・ボール・ゲームス(球技禁止)」と書かれた標識で遊んでいるものだ。
この作品は一種の反抗を示しており、現実にはここに遊び場はないのだが、彼らはこの標識をおもちゃとして使っている。

28.ファイア・スターター

バンクシーは、つい最近火事が起きたビルの壁にその放火犯をかいた。
チャーリー・ブラウンは、1969年に米国で製作されたアニメ映画『スヌーピーとチャーリー』の主人公である。
しばらくして、《ファイア・スターター》は壁から切り出され、eBay(イーベイ)で売り出された。
こうして空いた穴をふさぐために、ビルにはベニヤ板がもう1枚張り付けられることとなった。

29.シーズンズ・グリーティングス

空から降ってくる白いものに喜ぶ少年の姿がガレージの壁に描かれているが、よくよく見ると、雪に見えた物体は実はごみの焼却施設から出た灰だったという作品。

大気汚染の問題を皮肉たっぷりに表現しているようだ。

30.ガール・ウィズ・バルーン

今日にいたるまで、ハート形の風船を手放そうとしているこの少女の絵は、バンクシーの作品のなかで最も分かりやすいもののひとつとされてきた。

バンクシーは美術史上最も大胆不敵といっていいような悪ふざけをやってのけた。
《ガール・ウィズ・バルーン》の1枚がオークションで100万ポンド強の値がついた直後に、自らそれを破壊するよう仕組んだのだ。
2018年10月5日金曜の夜、ロンドンのサザビーズのオークションで、
《ガール・ウィズ・バルーン》はその日最後の競りにかけられ、売却価格は、これまでバンクシーがオークションで打ち立てた最高記録と同じ104万ポンド。

しかし、落札のハンマーが打ち下ろされた瞬間、キャンバスは額縁に仕掛けられたシュレッダーを通過し始めた。
バンクシーは、額縁の下から細断された作品が垂れ下がっている写真に《ゴーイング・ゴーイング・ゴーン…(ありませんか、ありませんか、落札)》というタイトルをつけ、インスタグラムに投稿した。

参考: 「バンクシー展 天才か反逆者か」

・小さな大砲インスタグラム